赤外線外壁調査とは?メリットやデメリットなど徹底解説

外壁調査には、専用の器具で外壁を叩き、音の違いから劣化や異常を確認する「打診調査」と、赤外線カメラを使用して温度分布を可視化し、内部の状態を非接触で評価する「赤外線外壁調査」があります。
特に赤外線外壁調査は、効率的で建物を傷つけず、コストパフォーマンスに優れた調査方法として注目されています。ただし、高度な専門知識が必要であるため、対応できる企業が限られている点も特徴です。
本記事では、赤外線外壁調査の仕組みや種類、従来の調査方法との違い、さらにメリット・デメリット、費用相場、調査の流れや業者選びのポイントまで、詳しく解説します。
建物の長寿命化や修繕コストの削減を目指すオーナー様にとって、赤外線外壁調査がもたらす価値をぜひご確認ください。
弊社リビングカラーコーポレーションの赤外線外壁調査は、最先端の技術で建物の劣化や異常を非接触で迅速に検出します。高精度な解析と効率的な調査により、コスト削減や安全性の向上を実現し、多くのオーナー様から信頼をいただいております。外壁調査をお考えのオーナー様は、ぜひ当社にお任せください。
赤外線外壁調査とは
赤外線外壁調査とは、足場を組まずに赤外線カメラを活用して建物の外壁内部の温度分布を解析し、目視検査だけでは捉えにくい断熱不良や劣化箇所、湿気の侵入などの潜在的な問題点を非破壊検査(物を壊さず検査)する先端技術です。
従来の打診調査や目視検査では見逃しがちな内部の異常や隠れた問題を、温度差を可視化することで早期に発見することが可能で、コストパフォーマンスに優れています。
赤外線外壁調査の種類
赤外線外壁調査には、「地上赤外線調査」と「ドローン赤外線調査」の2種類があります。どちらも赤外線カメラを使用して調査を行う方法ですが、適用範囲や調査手法が異なります。
「地上赤外線調査」は地上から専用の赤外線カメラを用いて行う調査方法で、低層の建物や部分的な調査に適しています。ただし、調査角度が45度を超えると精度が低下するため、高層の建物に対しては適さない場合があり、その際は打診調査を併用する必要があることもあります。
「ドローン赤外線調査」はドローンに専用の赤外線カメラを搭載して行う最新技術の調査方法で、高層建物や広範囲にわたる調査に適しており、短時間で効率的に調査を進めることができます。
またクラックの調査を同時にでき、高所の精度の高いデータを取得することができます。
赤外線外壁調査は義務?必要?
赤外線調査を用いた外壁調査は義務ではありませんが、外壁調査は義務化されています。平成20年に国土交通省は既存建築物の外壁に関して、建築基準法(第12条第1項~第3項)に基づき、平成20(2008)年4月1日以降、建物の竣工または外壁改修後10年以上が経過した建物などについて、外壁の状態に関する定期的な調査を実施する方針が定められました。
この調査の対象は以下のような実施期間、外壁の仕上げ材、調査箇所があります。報告を怠った場合は法令違反となり、建築基準法101条により、100万円以下の罰金が課せられることがあります。
【実施期間】
- 特定建築物定期調査(部分打診や目視等による)により異常が認められたもの
- 竣工後10年を超えるもの
- 外壁改修後10年を超えるもの
- 外壁の全面打診等調査の実施後10年を超えるもの
【外壁の仕上げ材】
- タイル(PC・ALC版に貼られる場合や工場打ち込みも含む)
- 石貼り等(乾式工法によるものを除く)
- モルタル(一般的に20~40mm)
【調査箇所】
建物の外側で、特に歩行者が接する可能性のある面の上半分付近に限定されます。なお、外壁の下側に落下防止用の構造物が設置されている場合や、周辺の環境によって安全性が確保されている場合は、例外として調査対象から除外されるケースも存在します。
さらに、調査の具体的な実施にあたっては、境界付近や通路など、状況に応じた判断が求められるため、行政機関との連携や確認が必要とされます。
従来の外壁調査(打診・目視)との違い
赤外線調査は、特に高所や広範囲にわたる外壁検査において顕著なメリットがあります。まず、足場を組む必要がないため、作業準備や設置にかかる費用・時間が大幅に削減できます。
従来の打診・目視調査は、低所であれば比較的低コストですが、高所や広い面積の場合、足場設置が必須となり、結果的に人件費や工期が増大する傾向にあります。一方で、赤外線調査はドローンなどを用いて簡単にアクセスできるため、効率的に広いエリアを短時間で検査可能です。
また、赤外線カメラによって得られる温度データは、内部の断熱不良や湿気の侵入など、目視では見逃しがちな隠れた異常を早期に捉えることができ、これにより補修・改修のタイミングを最適化し、将来的な大規模修繕費用の削減にもつながります。
初期投資は必要なものの、足場費用や人件費、修繕リスクの低減を考慮すれば、全体的なコストパフォーマンスは赤外線調査の方が優れていると言えます。
赤外線外壁調査のガイドライン
国土交通省のガイドラインでは、令和4年1月18日付けの改正により、従来の打診調査に加えて、無人航空機を用いた赤外線調査が認められるようになりました。この赤外線調査は、テストハンマーによる打診と同等以上の精度で外壁の状態を評価できると位置づけられており、従来の方法に代わる、または補完する手法として活用が期待されています。
外部リンク(国土交通省):国土交通省の定期報告制度についてはこちら
赤外線外壁調査の仕組み
赤外線外壁調査は、専用の赤外線カメラと解析ソフトウェアを用いて、建物の外壁の温度分布を測定・解析し、見た目では捉えにくい劣化や不具合を早期に発見する技術です。以下では、その基本的な仕組みについてご紹介します。
サーモグラフィによる測定
この調査方法の中核をなすのが、サーモグラフィによる測定です。専用の赤外線カメラは、建物外壁から放出される赤外線エネルギーを捉え、目に見えない温度情報を画像に変換します。これにより、外壁の各部位の温度分布が色の違いとして示され、例えば温かい部分は赤やオレンジ、冷たい部分は青や緑などのカラースケールで表現されます。
高解像度のカメラを使用することで、非常に微細な温度差も詳細に記録されるため、断熱材の劣化、湿気の侵入、内部の空洞といった問題を、これまで確認が難しかったレベルで把握することが可能となります。また、撮影データはデジタル形式で保存され、後日精密な解析ができるため、経時変化の追跡にも役立ちます。
熱分布の可視化と問題箇所の検知
赤外線画像の色の違いをどのように解釈するかを具体的に説明すると、まず正常な状態の外壁は、断熱性能が保たれていれば、表面温度が比較的一定に保たれているはずです。
たとえば、夜間の温度が均一に分布している場合、どの色も同じ程度の冷たさ(または温かさ)になります。この状態で、もし局所的に急激に温度が高いまたは低い部分が確認された場合、その場所では断熱材が劣化しているか、湿気が原因で熱の伝導が異常になっている可能性があります。具体的には、次のような状況が考えられます。
・局所的に暖かい色(赤やオレンジ)が見られる場合
この場合、断熱材の劣化や剥離が起こっている可能性が高く、外部からの熱が建物内部に侵入しやすい状態かもしれません。あるいは、内部に熱源があり、それが異常に伝わっているケースも考えられます。
・局所的に冷たい色(青や緑)が見られる場合
逆に、湿気が原因で熱伝導が阻害され、温度が下がっていることが示唆されます。たとえば、外壁内部に水分がたまり、冷却効果が生じている可能性があるため、その部分は劣化の進行が早いことが予測されます。
こうした温度の違いがどの程度であれば「異常」と見なせるかは、建物の設計仕様や環境条件、過去の調査結果などにより判断されます。
計測条件の重要性
赤外線外壁調査の精度は、使用する機材の性能だけでなく、撮影時の環境条件にも大きく左右されます。最適な結果を得るためには、調査を行う際の気象条件や外壁の状態が非常に大事になってきます。
たとえば、曇りの日や、直射日光の当たらない穏やかな環境下では、外壁の自然な温度分布が正確に測定されやすくなります。一方、雨天や強い日差し、さらには外壁が汚れていたり濡れていたりすると、測定結果に誤差が生じる可能性があります。そのため、調査前には十分な環境チェックが必要です。
また、微細な温度差を検知するためには、数ミリケルビン単位の温度分解能を持つ高性能な赤外線カメラが不可欠です。このような高精度機器を用いることで、わずかな温度差も正確に捉え、外壁の状態を詳細に評価することが可能となります。
最適な計測条件で行った調査は、後の解析と報告においても信頼性の高く、建物の維持管理や補修計画の策定に非常に有効になります。
赤外線外壁調査のメリット
赤外線外壁調査は、従来の調査方法に比べて多くのメリットを持つ先進的な手法です。外壁の内部異常を非接触で効率的に検出できるため、早期発見による修繕コストの削減や、調査にかかる時間を大幅に短縮できる点が特長です。
また、足場を組む必要がなく、建物を傷つける心配がないため、住居者や利用者への負担も軽減されます。ここでは、赤外線外壁調査がもたらす具体的な利点について詳しく解説します。
安全性やコスト効率を重視する建物オーナー様にとって、どのような価値があるのかを確認してみてください。
早期発見によるコスト削減
赤外線外壁調査は、建物の劣化や異常を初期段階で発見できます。これにより問題が深刻化する前に適切な対策を講じることができるため、大規模な補修工事のリスクを低減し、長期的な修理費用や維持管理コストを大幅に削減できます。また、調査データに基づいた精密な保全計画が立てられるため、不要な修繕作業を防ぐことも期待できます。
また赤外線調査は従来の打診調査と比較して、コスト効率の高さが際立ちます。打診調査では足場の設置が必要になることが多く、費用を押し上げる大きな要因となります。一方、赤外線調査では足場を組む必要がないため、足場設置にかかる費用や時間を大幅に削減できます。
さらに、大規模な建物では赤外線調査の効率性が高くなります。打診調査では調査範囲が多きるなるほど人工が増加するため、費用が大きくなりがちです。一方で赤外線外壁調査では、数千平方メートルの調査でも1~3日程度で完了し、調査員も最小限の人数で対応可能で調査自体が短期間で終わります。
その結果、調査面積が広がるほど1平方メートルあたりのコストが下がるという特長があり、特に大規模な外壁調査では非常に高いコストパフォーマンスを発揮します。
このように、赤外線外壁調査は、早期発見による修繕費の削減、足場が不要な点によるコスト削減、さらに広い範囲での調査効率の高さといった要素を持ち、調査全体のコストパフォーマンスを大きく向上させる優れた手法です。
短時間で調査できる
赤外線外壁調査は、現地での撮影が効率的に行えるため、調査作業そのものは通常1日から3日程度で完了します。その後、撮影した赤外線画像を解析し、報告書を作成する作業が加わり、全体の工程は一般的に1週間、遅くとも2週間で完了することが多いです。
さらに、足場やゴンドラの設置が不要であるため、調査準備や片付けにかかる時間を削減でき、従来の打診調査に比べて調査期間を大幅に短縮できる点が大きな利点です。
これに対し、打診調査では足場やゴンドラの設置や解体が必要になるため、準備に時間がかかります。実際の調査作業自体は約1週間程度かかり、全体のスケジュールを考慮すると、完了までに1ヶ月以上かかることも少なくありません。
このように、赤外線外壁調査は作業効率の面で従来の方法に比べて優れた選択肢となっています。
住居者トラブルの軽減
赤外線外壁調査の大きなメリットの一つに、住民への負担軽減があります。
従来の打診調査では、足場の設置やゴンドラの使用が必要となり、建物の周囲が覆わる、作業音の発生、長期間の作業員の出入りなどがあり、クレームやトラブルが少なくありません。また、調査期間が長引くことで、日常生活への影響も大きくなる可能性があります。
一方、赤外線外壁調査では足場やゴンドラを使用する必要がなく、赤外線カメラを用いた撮影のみで調査が完了するため、現場作業が非常に短期間で終わります。例えば、1日から3日程度で撮影が完了するため、住民への物理的な影響を最小限に抑えることが可能です。また、騒音や作業員の出入りが少ないため、生活環境を損なうことなくスムーズに調査を進められます。
さらに、調査結果が迅速に報告されることで、修繕や保全計画も早期に進行でき、長期にわたる不安や不便を軽減します。このように、赤外線外壁調査は効率的かつ住民の負担を抑えた方法として、建物管理において非常に有用です。
建物を傷つけない
赤外線外壁調査の大きなメリットの一つは、建物を傷つけることなく調査を行える点です。従来の打診調査では、ハンマーや打診棒を使用して外壁を叩き、反響音や振動を確認するため、外壁表面に微細な傷がつく可能性がありました。また、目視や手動での確認に伴う接触により、仕上げ材を損傷するリスクも否定できません。
一方、赤外線外壁調査は、赤外線カメラを用いて外壁の温度分布を遠隔で測定する非接触型の調査方法です。この手法では、外壁に直接触れる必要がないため、外壁の仕上げ材や構造部分を一切傷つけることなく、内部の状態や異常を可視化することが可能です。温度分布から問題箇所を正確に特定できるため、建物の美観や構造を維持しながら調査を進められるのが大きな特長です。
また、非破壊のため調査後の補修や清掃が不要で、建物へのダメージがゼロである点もコスト削減や管理効率の向上につながります。特に、建物の外観を重要視する商業施設や、改修後間もない建物などでは、このメリットが非常に高く評価されています。
安全性が高い
赤外線外壁調査は、安全性が高いという点でも大きなメリットがあります。
従来の打診調査では、特に高層建物の場合、足場やゴンドラを使用して調査を行う必要があり、高所作業員の落下事故、また作業員だけでなく建物周辺を通行する人々にも潜在的な危険をもたらす可能性があります。
一方、赤外線外壁調査では、赤外線カメラを用いて遠隔から建物の外壁を撮影するため、高所作業や足場の設置が不要です。ドローンを活用した調査では、地上から操作するだけで高所の外壁を簡単に撮影でき、調査員が危険な場所に立ち入る必要がありません。そのため、作業員や通行人に対する事故リスクを大幅に低減できます。
特に、学校や公共施設など、安全基準が厳しく求められる建物において、多く採用される理由の一つとなっています。
赤外線外壁調査のデメリット
赤外線外壁調査は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。調査の精度が天候や時間帯に左右される点や、取得した赤外線画像の解析に高度な専門知識が必要な点がその一例です。また、建物の構造や外壁材の種類によっては、この調査方法が適用できない場合もあります。
ここでは、赤外線外壁調査を検討する際に知っておくべきデメリットを詳しく解説します。
天候や時間帯に左右される
天候の影響で外壁の表面温度が大きく変化する場合、正確なデータを得ることが難しくなる場合があります。
たとえば、直射日光が強い晴天の日は、外壁が均一に熱を吸収せず、測定結果にムラが生じる可能性があります。また、雨天時には外壁が濡れることで、熱伝導が変化し、通常時の温度分布とは異なるパターンが記録されるため、異常の判定が難しくなる場合があります。さらに、強風が吹いている場合も、外壁の表面温度が風によって冷却され、正確な測定が妨げられることがあります。
こうした天候の影響により、調査スケジュールが天候に左右される可能性があるため、日付を確定できず、〇月〇日~〇月〇日の間といった調査委になりやすいです。このように柔軟な計画調整が求められる点が赤外線外壁調査のデメリットの一つと言えます。
画像解析には専門知識が必要
赤外線外壁調査では、温度差が表す内容を正確に解析するには高度な専門知識が必要です。これが赤外線外壁調査の一つのデメリットと言えます。
赤外線画像には、断熱不良や湿気の侵入、外壁内部の劣化などを示す温度パターンが現れますが、外壁の設計仕様や、撮影時の天候や時間帯なども解析結果に影響を与えるため、これらの要因を理解し適切に判断できるスキルが求められます。
さらに、異常の特定だけでなく、修繕の優先度やリスクの程度を評価するためには、建築工学や外壁の施工に関する知識も必要となります。そのため、赤外線外壁調査を実施するには、画像解析の専門家や十分な経験を持つ技術者が不可欠になります。
このデメリットを克服するためには、専門知識を持った調査員が担当することや、解析に必要な訓練を受けた人材の確保が重要です。
弊社リビングカラーコーポレーションでは「赤外線建物診断技能師」の資格をもった技術者による赤外線外壁調査を実施しています。高精度な解析と効率的な調査により、コスト削減や安全性の向上を実現します。外壁調査をお考えのオーナー様は、ぜひ弊社までご相談ください。
建物によっては調査ができない
赤外線外壁調査には優れた利点が多い一方で、「建物の種類や構造によっては調査ができない」というデメリットがあります。
例えば、外壁が金属パネルや鏡面仕上げのように、赤外線を強く反射する性質を持つ材料で覆われている場合、反射した赤外線が正確なデータの取得を妨げるため、カメラが正確に温度を測定できないことがあります。
さらに、外壁のデザインや形状が複雑な建物、例えば曲面が多い建物や装飾が多い外壁では、カメラの視野や撮影角度が制限され、全体を均一に測定することが難しくなるケースがあります。同様に、外壁の一部が他の建物や構造物に隠れている場合も、調査が困難です。
このような制約を克服するためには、事前に建物の構造や素材を詳しく確認し、赤外線調査が適切に適用できるかどうかを判断する必要があります。場合によっては、赤外線調査と従来の打診調査を併用することで、効果的な結果を得られる場合もあります。
赤外線外壁調査の費用相場
外壁調査の費用は、調査方法や建物の規模・形状や企業によっても大きく異なります。
調査方法には、主に下記があります。
- 地上赤外線調査
- ドローン赤外線調査
- 打診調査
- ロープ打診調査
外壁調査費用で大きく割合を占めているのが人件費、足場費用になります。特に打診調査では足場+人件費が必要なため、調査範囲と費用が比例していく傾向にあります。
費用相場
外壁調査の直接費用相場(足場設置やその他の間接的な経費を差し引いた調査作業そのものにかかる費用)についてご紹介します。
赤外線調査は、1平方メートルあたり120~400円程度が一般的な相場であり、ドローンを使用した場合でも300円前後と比較的安価に抑えられるのが特長です。一方、打診調査の費用は1平方メートルあたり160~800円程度とされますが、これに加えて足場設置費用や作業員の人件費が加わるため、工期が長引くほど総コストが増大する傾向があります。
【外壁調査直接費用】
- 赤外線調査: 100~400円/㎡
- ドローン赤外線調査: 約300円/㎡
- 打診調査: 160~800円/㎡
- ロープ打診調査: 240~450円/㎡
総額では、マンションやビルのように外壁面積が広い建物では、足場設置が必要となる打診調査では調査単価が数倍から数十倍に達する場合があります。またロープアクセスによる打診調査は足場が不要なため費用を抑えられますが、広範囲なほど人件費が発生するため、赤外線調査に比べて割高になることがあります。
赤外線調査の大きな利点は、調査面積が広くなるほどコストメリットが増す点です。広範囲を短期間で調査できるため、調査員の人数や作業日数が増えることがなく、1平方メートルあたりの単価が安定します。たとえば、大規模マンションやビルでは、打診調査と比較して赤外線調査の方が大幅に費用を抑えることができます。
また、赤外線調査は足場やゴンドラの設置が不要で作業効率が高いため、さらにコスト削減につながります。特にドローンを活用する場合、高所の調査も迅速かつ安全に行えるため、高層建物ではコストパフォーマンスと安全性の両方で非常に優れています。
総じて、赤外線調査は広い調査面積を持つ建物や高層建物において経済的で、効率的に外壁の状態を把握できる手法として注目されています。ただし、小規模な建物や詳細な部分的調査が必要な場合は、打診調査が適している場合もあるため、建物の状況や調査目的に応じて最適な方法を選択することが大切になります。
調査の流れ
外壁調査は、建物の外壁状態を正確に把握し、安全性や耐久性を維持するために非常に重要です。その調査は、事前準備から報告書の提出まで一連の流れに沿って進められます。それぞれのステップが建物の状態評価において重要な役割を果たし、調査結果をもとに適切なメンテナンスや補修計画を立てることが可能となります。ここでは、外壁調査の一般的な流れについて詳しくご紹介します。
一般的な調査の流れ
一般的な外壁調査の流れは以下のようになります。
- 見積もりと事前調査
- 事前確認(踏査)
- 現場調査
- 調査結果の解析
- 報告書の作成
- 結果の納品と説明
1. 見積もりと事前調査
調査費用を算出するために、建物の外壁面積や形状、外壁材の種類、調査方法を確認します。場合によっては、スタッフが現地を訪れ、外壁の状態や周辺環境を詳しく確認する「見積もり調査」を実施します。
この調査により、より正確で無駄のないコスト計算が可能になります。特に建物の規模や条件が複雑な場合は、このプロセスが重要となります。
2. 事前確認(踏査)
調査当日にスムーズな作業を行うため、現地で調査手法や手順の確認を行います。この際、赤外線撮影の位置や、ロープ・ドローンの使用計画、光波測量器の設置場所などを確定します。
また、必要に応じて近隣の建物への立ち入り許可を得る場合もあります。建物の条件により、1時間から1日程度を要しますが、事前確認により当日の効率的な作業が可能になります。
3. 現場調査
天候や環境条件が整った日に現場調査を実施します。赤外線調査や目視調査、打診調査など、建物や調査目的に応じた方法を選択し、必要に応じて複数の方法を同時に行います。
赤外線調査は特に早朝や日射条件が整った時間帯に行われ、打診調査や目視調査は日中に行うのが一般的です。建物の規模や形状にもよりますが、2,000㎡程度の外壁を対象とする場合、1~3日程度が目安となります。
4. 調査結果の解析
現場調査で得られた赤外線画像や目視記録を基に、外壁の状態を解析します。この解析では、外壁の温度分布から異常箇所を特定し、打診や目視調査の結果と照らし合わせて劣化の程度や原因を診断します。
建物の規模や状態によりますが、解析作業には通常2~5日程度を要します。経験豊富な専門家が解析を担当することで、より正確で信頼性の高い診断が可能になります。
5. 報告書の作成
調査結果をまとめた報告書を作成します。報告書には、赤外線画像や調査結果図、異常箇所の特定情報が含まれ、建物の外壁の状態を総合的に判断します。
また、一般の方にも分かりやすい内容を心掛けており、異常箇所の詳細な説明や補修の優先順位、推奨される補修方法などが記載されます。この作業には、建物の規模によりますが、通常1週間程度を要します。
6. 結果の納品と説明
最終的に報告書を納品し、調査が完了します。納品物には、調査報告書、結果図、関係写真、赤外線画像(赤外線調査を実施した場合)などが含まれます。必要に応じて、建物の現地で調査結果を説明し、補修方法や費用の概算についても提案します。補修工事は通常別業者が担当するため、信頼できる業者の紹介も可能です。
事例紹介
こちらでは、弊社が実施したドローンを活用した外壁調査の実績事例をご紹介いたします。従来の方法に比べ、より効率的かつ精度の高い調査を実現し、現場での空撮調査からAI分析による報告書作成まで迅速に対応した事例をご覧いただけます。これにより、調査費用の削減や、より効果的な状況把握を可能にしました。
短期間で完了したケース
実施例として地上5~6階、40~60戸のマンションの外壁調査ををドローンで実施。 現地での空撮調査1日、AIによる分析と報告書作成まで半月で終了したケースもあります。 12条点検でも対応可能です。外壁調査の効率化と費用削減が実現したケース
施例として、マンション(地上9階/60戸)の外壁調査をドローンで実施しました。クライアントは、従来の方法では工事前提で調査を行う必要があり、足場設置費用が高額になることを懸念していました。また、大規模修繕工事と外壁調査を切り離して検討したいという要望があり、そのためドローンによる調査を依頼されました。
ドローンを活用することで、従来の打診法に依存せず、調査員のスキルや経験に左右されることなく現状を可視化できました。また、調査費用の削減にも繋がりました。
調査後、クライアントからは「従来の方法では工事前提の調査となり、現状を把握するのが難しかったが、ドローンを使うことで現状をしっかり可視化でき、どの部分に対策が必要かが明確になった。この方法は非常に説得力があり、今後も取り入れたい」と高評価をいただきました。
業者の選び方とチェックリスト
外壁調査を成功させるためには、信頼できる業者を選ぶことが重要です。業者選びを間違えると、調査の精度が低くなるだけでなく、不適切な修繕計画が立てられるリスクも生じます。ここでは、業者選びの際にチェックすべきポイントと、比較検討のコツについて詳しく解説します。
業者を見極めるポイント
まず注目すべきは、業者が外壁調査に関する専門知識や実績を十分に有しているかどうかです。具体的には、以下の点を確認しましょう:
・資格と技術力:赤外線建物診断技能士やドローンパイロット資格などの有無を確認します。これらの資格は、業者の技術力を保証する一つの指標となります。
・実績:これまでの調査事例や対象建物の種類を確認し、特に自分の建物に近い調査経験があるかを見極めましょう。
・調査手法の多様性:赤外線調査だけでなく、打診調査や目視調査など、建物の状況に応じた最適な調査方法を提案できる業者が理想的です。
見積もりやアフターサポートの確認
業者を選ぶ際は、見積もり内容やアフターサポートの体制も重要です。調査費用の透明性と、その後のフォローアップが適切に行われるかを確認しましょう。
・見積もりの内訳:調査費用だけでなく、足場設置費用や追加作業が発生する場合のコストも明記されているか確認します。不明瞭な項目が多い場合は注意が必要です。
・アフターサポート:調査後に補修計画や具体的なメンテナンス提案を行ってくれるかどうかも確認しましょう。一部の業者は、補修業者の紹介や相談にも対応しています。
複数業者からの比較検討のすすめ
外壁調査は費用が大きく異なる場合があるため、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが大切です。一社だけに依頼するよりも、価格やサービス内容、調査手法の違いを把握することができます。
・比較のポイント:単に費用が安い業者を選ぶのではなく、調査内容の詳細やアフターサポート、対応の丁寧さも含めて総合的に判断しましょう。
・質問を投げかける:各業者に調査方法や作業スケジュールについて具体的に質問し、回答の正確性や対応力を見極めます。
赤外線外壁調査でよくある質問(FAQ)
赤外線外壁調査でよくある質問にお答えします。
赤外線外壁調査の所要時間は?
赤外線外壁調査は、現地での撮影作業が効率的に行えるため、調査自体は一般的に1日から最長でも3日程度で完了します。撮影後はパソコンで画像解析と報告書の作成を行い、これに通常2週間から最長1ヶ月程度を要します。
そのため、現場作業から報告書提出までの全工程で、大体2~3週間程度で仕上がるケースが多いと言えます。足場やゴンドラの設置・解体が不要なため、従来の打診調査に比べて総合的な調査期間を大幅に短縮できるのが大きなメリットです。
一方で打診調査の場合、足場やゴンドラの設置解体作業も含まれるため、調査機関は数日から1週間以上かかり、作業完了までには1ヶ月以上かかる場合もあります。
赤外線外壁調査には資格が必要?
赤外線外壁調査自体には法的に特定の資格が必須とはされていませんが、専門技術や知識の有無によって調査結果の精度や信頼性が大きく異なるため、資格は非常に重要になります。資格を有していることで、実施する調査の信頼性、データの解析や報告書作成においても客観的かつ説得力のある結果が得られます。
弊社リビングカラーコーポレーションでは、「ドローンパイロット1級」「ドローン調査安全管理者」「赤外線建物診断技能師」の資格を有する経験豊富な技術者が調査を担当しております。高品質な調査結果を迅速に提供できるだけでなく、万が一のリスクにも万全の体制で対応できるため、多くのオーナー様から信頼をいただいております。外壁調査をお考えのオーナー様は、ぜひ当社にお任せください。
どれくらいの頻度で実施すればいい?
建築基準法に基づく外壁調査の実施頻度は、建物の状態や法令に応じて2種類の点検があります。
まず、定期的な点検としては、1~3年毎におこなう特定建築物定期調査があり、これは建物の状態を日常的にチェックするために実施されます。
また、竣工または外壁改修から10年以上経過した建物などについては、歩行者などへの安全リスクを防止するため、10年ごとに全打診調査(打診・赤外線調査)を行うことが義務付けられています。
報告を怠った場合は法令違反となり、建築基準法101条により、100万円以下の罰金が課せられることがあります。
赤外線外壁調査に使用するカメラの特徴は?
赤外線外壁調査では、サーモカメラと呼ばれる赤外線カメラを使用して、建物の外壁表面温度を測定します。この調査では、外壁の温度分布を画像化することで、外壁の内部状態や損傷箇所を推定します
外壁の細かい温度差を正確に捉えるためには、非常に高い解像度を持つサーモカメラが必須で、解像度が640×480ピクセル以上であることが望まれます。また、温度分解能の面では、数ミリケルビン単位の微細な温度差を検出できる性能が理想とされます。
弊社リビングカラーコーポレーションでは、最先端の技術による高いパフォーマンスにより、あらゆる面で従来のドローンとは比べ物にならないほど高性能な機体「Matrice 300 RTK DJI社製」を使用しています。解像度は640×512ピクセルで、メカニカルシャッターとモジュール間の時間をマイクロ秒単位で同期。位置・姿勢補正技術との組み合わせにより、センチメートル単位でのデータ撮影が可能です。外壁調査をお考えのオーナー様は、ぜひ当社までご相談ください。